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「“厳しくしてください”」は、依存体質の子どもを育てる

  • 執筆者の写真: Kentaro K
    Kentaro K
  • 3月31日
  • 読了時間: 7分

更新日:4月9日

「先生、うちの子にはもっと厳しくしてください。」


こういった依頼を保護者の方から受けることがあります。


一見すると、教育熱心な親御さんのようにも思えますし、


愛情の裏返しであることは重々理解しています。


しかし私は、この言葉を聞くたびに違和感を覚えます。


それは、「厳しさ」の効果を誤解されている方が、あまりにも多いからです。


ここで私が言う“厳しさ”とは、子ども自身に考えさせる余地を与えず、


大人の命令によって動かすことを指します。


感情的に叱ることや、言うことを聞かせるための支配的な関わりは、


子どもの成長にとってむしろマイナスになるケースが多いです。


レールの上を歩く子ども

親の望む「厳しさ」とは何か


「厳しさ」とは多くの場合、


「子どもに言うことを聞かせるための強制力」を意味しています。


「うまく子どもを管理してほしい」


「先生からガツンと言ってほしい」


「提出物を出すよう、先生から言ってください」


こういった言葉の裏には、


「強制力をもって手っ取り早く子供を成功させたい」という本音が透けて見えます。


しかし残念ながら、多くの場合それは真逆の効果を発揮します


つまり、


どんどんと「言われないとできない人間」へと変貌していくのです。


保護者の思い描く「成功」とは程遠い人間になってしまいます。


厳しく子供に命令をする母親

宿題 - タスク管理能力


例えば学校の宿題です。


決められた期限までに宿題を終えるのは、タスク管理能力が重要です。


今自分はどれくらいのタスクを抱えていて、


いつ・どのタイミングでやるべきなのか、


これは気合でやるものではなく、立派な能力なのです。


だから「やれ」と命令して、その通りに動かしたところで、


子どもの内面ではタスク管理能力は育ちません


宿題を出さないで痛い思いをしたとか、


逆に宿題をやって勉強が分かるようになったとか、


どうすれば効率よくできるだろうと考えるなど、


試行錯誤、失敗体験・成功体験を通じて子供は学んでいくものなのです。


にもかかわらず、全て命令で動かしてしまっては、


せっかくタスク管理を学ぶべき機会なのに、


何も学ばないで終わってしまいます。


単に反応的に動いているだけで、


主体的に考えて行動する、自律的なタスク管理能力が育っていきません。


大人が先回りして「やれ」と命令するたびに、


その学びの機会は失われていき、


永遠に「命令ベースのタスク管理」に追われる人間になってしまいます。


タスク管理のイメージ

計画力 - スケジューリング


他には「スケジューリング力」についても全く同様のことが言えます。


「勉強をしなさい」「宿題をしなさい」

「塾に自習に行きなさい」

「早くご飯を食べなさい」

「お風呂に入りなさい」

「もうテスト2週間前だよ」

「今やるべきことは勉強でしょう」


こうして命令をするたびに、


子どもが自分のスケジュールを見通す力が損なわれます。


スケジューリング力とは、


短期・中期・長期で自分の予定や目標を立て、


それに向かって行動を調整する力です。


これは社会に出てからもずっと必要とされるスキルです。


たとえば、

「来月のテストに向けて、今から何をしておくべきか」を考えること。


あるいは、

「今日は塾があるから、家での勉強時間はこのくらいになる」と逆算すること。


さらには、

「夏までにこの問題集を終わらせて、秋には過去問に入ろう」と学習設計をする力。


こういった思考は、子ども自身の頭の中で育てていかなければ意味がありません


しかし現実に、親がすべてを決めてしまうとどうでしょう。


子どもは自分でスケジュールを考える機会すら持てません。


もちろん、子どもがやることですから、最初からうまくはいきません。


時間の見積もりを誤ったり、無理な予定を立てて破綻したりすることもあるでしょう。


逆にスケジュール通りにこなせて、


一見無理に見えたことをすべてこなせた快感が得られることもあります。


こうした成功体験・失敗体験こそが学びなのです。


スケジュール管理がうまくいって喜ぶ女の子

命令する大人が育てるのは「従属する子ども」


なぜこんなにも「命令・強制」が横行しているのでしょうか。


それは保護者側の成功体験が原因のように思います。


小学生のうちは「命令・強制」が絶大な効果を発揮します。


それは


  • 反抗期が本格化する前で

  • 学校の勉強が簡単


だからです。

(中受向けではない)塾内模試で偏差値60を超えることもザラにあります。


それを親が成功体験にしてしまい、


「命令・強制が大事だ」と学んでしまうんですね。


親御さんとしても、


子どもに失敗して欲しくない、


損をして欲しくないという想いから、


「命令・強制」で一時的な成果を出せたことを


成功体験としてしまうのかもしれません。


もちろん、それが愛情の裏返しであることは痛いほど分かっているのですが、


でも先ほどからお伝えしている通り、


お子さんの内面では重要な能力が育っていないのです。


子どもの進路を指示する母親

中学校以降もそれを続けるとどうでしょう。


まず反抗期が本格化し、子どもが言うことを聞きません。


親が強制でどうにかできるほど、中学校の勉強は簡単ではありません。


部活も始まり宿題・課題も増え、親が管理しきれません。


こうして親の管理が限界を迎えた時、


子どもの意思がないままでは徐々に破綻していきます。


「命令・強制」で中学校以降もうまくいったケースは、


少なくとも私は過去20年で目にしたことがありません。


子どもはどんどんと「指示待ち人間」になっていき、


勉強面で言えば中学・高校の勉強には全くついていけなくなってしまいます。



例えば中学生になっても時間割や持ち物の把握が出来なかったり、


受験生になっても志望校1つ決められない人間になってしまう事例が沢山あります。


従順で、口答えしない、言われたことはやる


そういった「一見いい子」は、見方を変えれば、


自分で未来を切り拓く力のない子どもです。


これは、勉強だけでなく、人生全体に関わる問題です。


将来、社会に出た時に、


「言われたことしかできない」「自分で考えて動けない」という姿勢では


仕事でも社内・社外から信頼を得られにくい状態になってしまいます。


やる気のないサラリーマン

子どもの将来を本当に考えるのであれば、「厳しくしてください」ではなく、


「自分で考える余白を与えてください」が大事ではないでしょうか。



見守ることこそ、本当の厳しさ


私はこれまでに多くの親子と接してきました。


そして強く感じるのは、「本当に厳しい親」とは、


「口うるさく命令する親」ではなく、


「信じて見守る親」であるということです。


言いたいことを飲み込んで、


子どもが自分の頭で考えられるように、敢えて手を出さずに待つ。


その間には、もどかしさや不安もあります。


見ていられないような失敗もあるかもしれません。


けれども、子どもが本当に力をつけるのは、


そういう“自由の中での試行錯誤”なのです。


口出しをせずに見守る。失敗しても責めずに支える。


必要なときだけ、そっと手を差し伸べる。


それこそが、もっとも「厳しい」姿勢なのだと私は思います。


もちろんこれは何も言わずに放っておく「無関心」とは違います。


必要な時に手を差し伸べる、「準備のある見守り」こそが、


子どもの成長を支える本物の厳しさです。


子どもを温かく見守る両親


参考になる書籍・資料

動機づけ研究の理論と応用: 個を活かしながら社会とつながる

よくわかる心理学 (やわらかアカデミズム・〈わかる〉シリーズ)

MSDマニュアル:依存性パーソナリティ障害

レジリエンスが身につく 自己効力感の教科書


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